映画「恋人たち」
初期衝動は忘れてしまったけれど、長い間「はやく観なければいけない」と胸のつかえだった作品。
先日下高井戸シネマでようやく観ることができた。
初めての下高井戸シネマ。
日本アカデミー賞の影響か、前に上映していた「母と暮らせば」もかなりのお客さんが入っていた。
「恋人たち」もかなり長い期間各地で上映されているにも関わらず、7割ほど席が埋まって上映開始した。
「希望と再生の物語」だというざっくりした情報しかないまま見始めたので、冒頭から中盤にかけての閉塞感と報われない出来事の連続にやや面食らう。
小さな積み重ねでできた幸せはある日突然奪われることもあれば、砂時計のようにゆっくり減っていくこともある。
妻を殺され日常を突然奪われたアツシと、
なんとなく結婚し退屈な毎日のなかで自分の価値がゆっくりすり減っていくことを感じながら生きていく瞳子。
それぞれ救いを求めて、このクソみたいな世界で生きている。
事態は急展開することなく、むしろ終盤にかけてゆっくり下降していく。
ただ、絶望のなかにほんの一瞬だけ光が差し込むことがあり、遠泳の息継ぎのように心に酸素を運んでくれる。
「もっと君と話したいと思うよ」
「あめちゃん食べます?」
完全な救いになるには力が足りないけれど、無責任な励ましかも知れないけれど、そんな言葉だけで人はあと1日生きてみようと思えるんじゃないかな。
むしろ人生はそんな一瞬の輝きに支えられて、なんとなくいい感じにまとまっていくのかなと。
見たあとに力がふつふつと湧いてくるようなハートフルな映画ではないけれど、地べたに足をつけて、下を向いたり前を向いたりして生きて行かなければと思わせてくれる作品でした。